シロアリ被害と植栽配置の関係について
外構工事の中の、ある程度最終段階で作業を行うことが多い、植栽の工事になりますが、いろいろと出来上がったそれぞれのご自宅の外構を、住宅街を通る際に眺めて思うことなのですが、建物のすぐ近くにシンボルツリーや植栽を配置し、さらに夜間には地面からのライトアップにより、建物の外壁に植栽の影を映し出し、独特の雰囲気を醸し出したオシャレな住宅などがあります。
このオシャレな植栽の本数が、数本のアクセントとして存在させているのなら気に止めることもないのですが、少し行き過ぎた気になる事例が意外とたくさんあります。
建物の基礎の立ち上がりをバックに土を盛り込んで花壇を設けている、又は建物のすぐそばに沢山の植栽を設けている建物。
低層型のウッドテラスで、その上に沢山の鉢植えの植栽を建物際に並べ設けている建物。
建物を害虫から守る一つの要素として、建物の床下やその周辺の環境を良くすることが基本になります。
その床下の被害として一番恐いものが、シロアリの存在になりますが、ただ建物を良質な乾燥状態に保っていたとしても、被害が起きないとは限りません。
そのような怖いと言われるシロアリの特性を少し説明していきたいと思います。
まず日本には約20種類以上のシロアリが生息するようで、その中でもヤマトシロアリ・イエシロアリ・アメリカカンザイシロアリ、特にこの3種類が主に被害をもたらすシロアリになり、その中の日本で一番生息する約8割以上の被害をもたらすヤマトシロアリに関して取上げてみます。
容姿はもちろん普通のクロアリに似た、少し小型で白いアリになりますが、シロアリはクロアリと違い目がなく臭いで方向性を見つけ、光や乾燥を嫌い、暑さにも弱く、常に湿った環境を好む生態になり、敷地内や家の下、地中なら所構わず巣を作り生息します。
このように小さくてひ弱に見えるヤマトシロアリですが、見た目とは裏腹に、生命力の強いシロアリなら、ガラスや鉄以外の物体ならほぼ食べると言われるほど獰猛で、極端に言うと環境が悪くなって大量のシロアリが発生した建物なら、全てを食い付くすといってもオーバーではないぐらい、木造住宅にとっては天敵となる害虫になります。
そんなシロアリを誘発させる建物への散水行為が、昭和の建物で非常に多かった、土間タイルに排水を設けた、土間に水を流せるトイレや洗面脱衣室、ユニットバスではなく浴槽据付け型の在来工法による、壁タイル・土間タイルに排水を設けた施工方法による浴室で、昭和世代の方ならご存知の方が多いと思いますが。
このような在来工法タイル張りの水廻りリフォームなどを行った際に、必ずその周囲に使用している土台や柱、その他下地材などの材木は、大半が水により常に湿った状態にあることが多いため、木目の年輪部分である柔らかい白木(夏目)部分を食害によりほぼ失っていて、工事中に露わになった材木にバールなどの道具で少し力を加えていくだけで、その材木は簡単にボロボロと砕け落ち見事に原型を失ってしまうなど、よく現場でそのような状況を見受けることもありました。
下の写真は床下の材料になり、シロアリの被害を受けた材木の状況です。
【砂のような模様は、シロアリが外気に触れないように体を守るための蟻道といわれる道です。】
ではなぜこのような被害を受けるのか、その昭和の建物の浴室を例に上げた時に、毎日浴室で使用するお湯や水が、撥水効果のすぐになくなるタイル目地から浸透し、その周囲に位置する土台や柱などの材木に到達し、常に湿った環境にさらされてしまうため、その湿りによる材木の腐食する臭いや、水分を大量に含んだ良質な環境を察知し、建物や敷地内の土壌に潜むシロアリを地面から誘発させて、その良質で大好きな環境を求め、又そこにシロアリの大好物な木材に含まれる、セルロースと呼ばれる主成分を食べることにより被害が生まれます。
シロアリ被害を沢山見てきた中で、やはり建物周辺1m以内はもちろん花壇やまとまった植栽関連の造園工事はNGとし、あといらなくなった鉢植え雑貨や木材、ダンボールや雑誌などは置いたまま放置しないように、又はこのような例に上げた紙類は、外部のコンクリート土間に放置するだけでも、非常に湿気を含むため、シロアリにとっては最高の環境になるので、建物四周には極力余計なもの又は、多すぎる植栽計画は控えめに検討し、風通しのよい環境を最優先に外構計画を行うようにしましょう。
最後に豆知識として、腐れや枯れ木にまだ満たない生木のシンボルツリーや植栽でも、地中からのシロアリによる食害事例はあるそうです。